2019年5月26日午前1時~新宿Loft Plus/Oneにて「TROYCA SECRET NIGHT Vol.1」が行われました。
登壇者は、長野敏之(代表取締役)、あおきえい(取締役)、加藤友宜(副社長)。
乾杯に続き、早速内容に入っていきます。

第一部 ~AICと放浪息子~

§放浪息子§
長野 トロイカという会社を語る上で最初に出てくる作品が「放浪息子」です。アニメインターナショナルカンパニーという通称AICという会社が僕らの出発であり、始まりでした。
あおき 「放浪息子」は志村貴子さん原作の漫画をアニメ化させていただいたのですが、その時の監督が僕、制作プロデューサーが長野君、撮影監督が加藤君、というメンツで作っていたんですね。
長野 大変だったんですよ、泣きそうなくらい。あおきさんの求める志村貴子さんラブみたいな、作品愛が(強くて)。スタッフに関して言うと、僕が初めてあおきえいさんと組んだのが「GIRLSブラボー」というタイトルで。その時にキャラクターデザインを務めていたのが牧野竜一さんという方だったんですけども。そのお二人に対して僕はすごく酷いことをしていたんですね。何も知らないがゆえに全て監督と総作監に押し付けて、何とかしろよお前ら、みたいなスタンスで、強気にやっていた時期があって。そんなことをしながら成長していく中で、「放浪息子」というタイトルで同じ監督があおきさん、キャラデが牧野さんとなったときに、自分の中では僕自身の成長を見てもらいたい、という気持ちがあったので、とにかく尽くすだけ尽くそう、と思って関わったタイトルでした。
あおき ご存じの方は説明は不要だと思うんですけど、志村さんの漫画は非常に繊細で特にカラーがね、水彩のすごくきれいな色使いをされるんですね。それを何とか画面に反映させたくて、いわゆるアニメ塗りとは違うタッチでできないかと、撮影にずいぶん頑張ってもらって。どれくらいだっけ?
加藤 テスト期間は9か月くらいですね。それでもうオンエアがやばいってなって、ケツに火がついて頑張って完成させました。
あおき 「放浪息子」は現場のテンションが高かったというか、新しいものを作ってみようとか、志村さんのあの感じを何とか出そうよ、とか、そういうところでの団結力がすごく強い作品でした。長野君はもともと面識はあったけど、加藤君は撮影監督としてすごく優秀なんだということがその時にわかって、それでこのメンツでまた何か作れたらいいなあ、という気分が生まれて。それが最終的にトロイカ設立に結びついていく、という感じですね。
長野 ざっくり出会い編ですよね?
加藤 出会い編ですね。
長野 そのあと「放浪息子」をやったチームというのが、業界の方たちからすごく高い評価を頂きまして。本当にやって良かったなと思ったんですけれど。自分たちのやったタイトルが次のタイトルに結び付くんですが。この時あおきさんは何してたんでしたっけ?
あおき この時? 「放浪息子」の監督だよ!
長野 そっかそっか(笑)「放浪息子」が終わってから、僕らがまた同じ作品をやるまでちょっと期間が空くんですよ。その間って…
あおき その間は「放浪息子」が終わってすぐ、同じ年の10月に「Fate/Zero」というタイトルが2クールありました。だから後半の方は「放浪息子」をやりながらufotableに行って「Fate/Zero」の準備をしていました。
長野 だって僕(AICの)プロデューサーから怒られましたもん、早くあおきえいを開放しろって(笑)
加藤 長野さんとあおきさんの最初の出会いは何だったんですか?
長野 「GIRLSブラボー」で、いけ好かない、ジーパンからチェーンをジャラジャラつけてるヤツがいるなーと思ったら、それがあおきさんだったんです。当時、僕らのスタジオがすごーく貧乏くさかったのね、地下で汚くて。
加藤 AICスピリッツ。
長野 デジタルビルというのがすごくきれいなビルだったんですけど、格差がすごくて、僕はとにかくいつかデジタルに行くんだーという勢いでいたんですけど。そんな時にあおきさんと出会いましたね。
あおき 当時長野君がAICに入社した時、そんなにキャリアはなかったんだよね。
長野 制作3本目くらいではもうデスクやりなよ、という話になって。まあ入った以上は早く偉くなりたいなーみたいなのはあったので、そこは少しでも早くっていう。ただ右も左もわからないデスクという…これほど不安なものもないだろうという…(笑)あおきさんは(「GIRLSブラボー」が)初監督ですよね?
あおき 初監督です。やっぱり至らない点がこっちもいっぱいあったし、当時のAICスピリッツは外人部隊みたいな部署で、AICという会社の本筋とは少し違う人たちが集まっているようなスタジオだったので、戦力的にもそこまで高いわけでも無かったんですよ。
長野 ひどかったですね…
あおき ひどかったね…
長野あおき(笑)
長野 でもあの当時からずっとやってるのは、音響の送り迎えで。僕が大体運転しながらあおきさんを隣に乗せてるんですけど。そこで関わるタイトルの反省会をするんです。それは「GIRLSブラボー」の時からずっと変わってないと思います。「放浪息子」の時もそうですし、「アルドノア・ゼロ」の時もそうでしたし。密室空間でお互い本音で状況報告できる、貴重な空間なのかなあと思っています。ちょっと脱線しちゃいましたね。
加藤 そういう意味では僕はちょっと異例で、長野さん、あおきさんと初めて一緒にやったのは「放浪息子」が初めてで、そのあとはAZでしたね。長野さんとは「R15」とかありましたけど。
長野 ありましたね(笑)
加藤 という「放浪息子」を経た後にですね、もう早速…

§AICの危機§
長野 AIC自体はすごくいい会社で、今でも大好きなんですけども。残念ながら経営が若干覚束ないところがあって。そんな中で、ちょうど「放浪息子」をやっている最中だったかな、後半戦で経営が本当にやばくなってしまって。あおきさんとも相談しましたもんね。
あおき うん。結局「放浪息子」を作っているんだけれど、AICの制作資金が尽きかけていて、「放浪息子」用のお金なんだけど「放浪息子」に降りてこないみたいな不思議な状態で…自転車操業の末期ですよね。それで制作がストップまではいかなかったけれど、会社間のお金の支払いとかが一時滞ったりとかしてしまって…
長野 本当にぎりぎりで、やばかったんですけれど。様々な奇跡が重なって、傾いていたAICは持ち直して、よし、これでまた頑張るぞーとなってたんですけども。ところが!時同じくして!

§あおぶちいわ§
長野 若干流れがブレブレですけど。ここでアニメーションの企画が立ち上がります。この企画というのが「あおきえいさんで、ロボットもので、虚淵さんでオリジナルを作ろう」ということでしたよね?
あおき うん。僕は当時AICの社員ではなくて、「Fate/Zero」を作っている最中だったと思うんですが、アニプレックスの岩上敦宏さんに呼ばれて「オリジナル企画をやらないか」と、お話を振られて。岩上さんがテーマとして掲げたのは2つあって。まず脚本家が虚淵玄さんであること、作るべき内容がロボットものであること。で、監督を僕に頼みたいんだけどどうですか?と。それは是非やってみたい、ということで企画が動き始めて…。ただ一方で…。
長野 一方その頃AICはって話なんですが。僕が上司にこういう企画があるんだけど「放浪息子」のスタッフでロボット物をやってもらえないかってことでスタッフに声をかけ始めて。で、あおきさんとのシナリオ会議とかちょっとずつですけど参加し始めるっていうのが時間軸ですよね。
あおき そうそう。ひとつ喋り忘れちゃったんだけど。そのロボット物の企画を、どこのスタジオで作りますかと岩上さんから言われた時に、いくつか自分の中であった選択肢で、まず頭の中に浮かんだのがAICでした。それは僕がもともとAIC出身だったっていうこともありますし、あと何よりも「放浪息子」のスタッフの結束力みたいなものっていうのがすごく良かったので、またあの同じスタッフで違う作品を作れないのかな、と思っていたんです。それで岩上さんにAICを推薦して、そこから正式にアニプレックスからAICの方に依頼があるっていう流れだったと思います。
長野 はい。その流れで僕もシナリオ会議に参加することになったんですね。で、それで何度か「ブレスト」と呼ばれるものに参加して、ああいうことやろう、こういうことやろうみたいなのをみんなで話してたんですけれども、そのタイミングで、またAICが悪い虫を出しまして、某タイトルでとんでもない赤字を作り出しましてですね。この時の親会社はここまで何も言わないすごく素敵な親会社だったんですが、さすがにお怒りになられまして。そこから親会社が現場に介入するという流れが生まれたんですね。まあ、今振り返ると、別に親会社の株を上げるわけじゃないんですが、ある種当たり前のことを教えてくれてたんですね。お金は限られてるんだから、作品に全部ぶち込んじゃダメでしょ!っていう当たり前のことが僕らは分かってなかった。100万あるから100万全部使っちゃえーみたいな、何だったら120万使っちゃえみたいな、本当にザル計算というか。でも、親会社のおかげで、知識を学ぶ機会をいただいたかなとは思ってて。まあ、今思い返すとですよ。ところが、それだけだったらまだよかったんですけど、困った問題が起きてしまいまして。

§作品のために§
長野 さらにもう一発、ちょっと大きい赤字が発覚した瞬間に親会社が完全に怒っちゃって、今動いているタイトルを全部止めろって話になったんですね。
加藤 呼ばれましたよね、本社に。
長野 そうそう、そうなんですよ!
加藤 あまり組織図とか馴染みがなかったんですけど、所謂、役職クラスが全員呼び出されて、全員怒られるっていう(笑)
長野 むっちゃ怒鳴られましたね。怖かった(笑)でそれがあって、困ったのは今度、まさしくあおきさんの対応ですよね。
あおき ただ、俺、この辺の経緯って実はあんまりよくわかってなくて。AICがなんとなくお金がなさそうだっていう空気感はあったんですけど、AICって良くも悪くも昭和的な会社で、そういう経営危機を何度も何度も乗り越えているんですよ。15年くらい前にAICの社員だったとき会社が一回傾いて、給料が6割程度しか出ませんみたいなのが3か月くらい続いたことがあったんです。それでも何とかなったんですよ。だから今回も何とかなるんじゃね?っていうのが、あったんですけど、まあ、結果的に何ともならなかったですね(笑)
加藤 そうなんですよね。
長野 で、困ったのが、こっちなんですよね。「放浪息子」のスタッフもそうですし、外注の方たちもそうですし、もうやりますよってお声がけしちゃってるんですが、会社からは実質中止を言われてるんですよ。お前はもう動くなっていう風に言われてしまって、その当時は本当に困りましたね。どうしたらいいんだろうと。
加藤 簡単に補足をすると、制作費で垂れ流す赤字と、何も仕事をしなくても社員の給料とか家賃とかで出るお金が逆転するような状況が起きてる状態だったんで、もうお前らはモノを作るな、全部の外注もストップしろと、止められちゃったのが、割と大きな事件でしたね。
長野 ま、要は作れば作るほど赤字になっていくっていう。だったらもう何もするなみたいなことですよね、簡単に言えば。で、それで僕も結構悩んでたんですが、とはいえ、まだあの時はブレスト自体が多分月一くらい…だよね?
あおき まだ企画が生煮えの段階だったんで。そんなに頻繁には会ってなかったんですけど。
長野 本当に騙し騙し、打ち合わせ自体は進めていたっていうところですね。そのころ悩んでる時期のピークだったんですが、その頃、あおきさんってAICに籍はあったんですけど、ほとんど来てなかったんですよ。ただある日の夕暮れ時かな?あおきさんがひょこっと来てて、あー久しぶりだなぁなんて思いながらも普通に会話しながら声かけたときに、なんだろう、俺が悩んでるの多分知ってたんでしょうね。あおきさんが優しい言葉をかけるんですよ、俺に。「長野君、悩んでるんだったら一緒に考えようか」とか言うわけですよ。俺、なんか、ジーンと来ちゃって、「い、いいんすか?」みたいなことで、多分そこが本当にスタートラインだったかなと思いますね、今振り返ると。それがなかったら多分ないですよね。
あおき 俺、その話全然覚えてないんだよね(笑)。
長野 いやいやいや!!むっちゃ覚えてる、俺。
あおき あ、そう?
長野 誰もいない作画の部屋で、あおきさんだけが荷物を取りに来てたのかな?それで声かけてくれたの覚えてますよ。
あおき 長野君が企画から外れる外れないって話があったんだよね。
長野 そうですね。もう会社からは中止されてますからね。基本的には。
あおき うん。
長野 お前は何もするなって言われてたんで。
加藤 確かもう案件をお断りしようって話も出てましたよね。
長野 そう。覚えてますね。全部のメーカーさんにお断りして、中止させてくれみたいなのを言ってたと思いますね、上の方は。で、そんな状況の中で完全にストップになりそうだったんですけども、作品を作るためにどうするかっていうことを多分この二人(長野、あおき)で最初に考え始めたのが、トロイカ設立に入っていく感じですよね。で、そこに加藤君が入ってくるんですよね。
加藤 そうですね。その時僕ちょうどAICが中村橋から東新宿へ親会社との統合移転があって、それが落ち着いてくるくらいに、今後どうしようかな、みたいなところを考えていたのが確か2012年の後半だったと思います。懐かしいっていう感情しか出てこないですけど。
長野 結局自分たちとしては、第一にあったのは作品なんですよね。その当時は会社作る作らないっていうのはまったく別として、どうやったらこのタイトルができるかしか多分考えてなかったかなと思います。まあそこからちょっと…大分巻いたよね?俺頑張ったよね。
加藤 すごい巻いてます。まだ開始から30分ですよ。
あおき すげえ(笑)
長野 全部アルゼロの為だからね。
加藤 本当はこの話、1時間でやろうと思ってたんですけど(笑)
長野 すげぇ端折ったよ(笑)これでいいよね?
加藤 そうですね。それじゃあ、第一部完(笑)
長野 はい。じゃあもう、本来はここで休憩をいれる予定だったんです。なんですけど、ちょっと後半のアルゼロに時間を割く為、続けていきます。
加藤 じゃあ、続けて第二部ということで。
長野 ただ、二部のスタートの乾杯だけはあおきさんからお願いできればと。
あおき ああ。またやるんだね。
長野 これね、何のことはない。やるらしいんすよ。
加藤 じゃあ、もうドリンクが空の方ご注文お願いします(笑)
長野 始めていいですか?じゃあ、あおきさんお願いします。
あおき 乾杯!

ここからトロイカ創立のお話に入っていきます。次回の更新をお楽しみに!

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